別所先生インタビュー

お互いの紹介

五條:現在、別所先生は東京歯科大学にも勤務されていますが、現在どのような業務を担当されていますか?

別所:口腔がん検診ナビシステムの立ち上げを行っています。

五條:その口腔がん検診ナビシステムとはどのようなものですか?

別所:全国の開業医の先生が登録した、異常がみられる患者さんの問診表や写真に対して大学の専門医がサポートするというシステムですね。

五條:開業医がわざわざ大学病院にデータを送らなくても共有できるということですか?

別所:そうですね。がんを見つける検診の一つの手段として利用していただけます。

五條:それは凄いですね。

別所:口腔がんは歯科医師が正しい知識のもと診断すれば簡単に見つけられるのですが、欧米と比べて日本は発症率が増加しています。日本には、未だに「このまま様子を見ましょう」と言ってがんを大きくしてしまう歯科医師がいるのが現状です。こういう状況を防止するための啓蒙活動を私たちが行わないといけないと思います。

五條:そうですね。

別所:しばらく様子を見ていて良いのか、それともすぐにがん病院に紹介しなければいけないのかを開業医が判断するバックアップのためにこのシステムの開発に携わっています。

五條:別所先生はその監修を行われているんですね。開業医と口腔外科の専門医が連携できるシステム、素晴らしいと思います。

別所:東京のような都会ならすぐにがん病院に紹介することもできますが、僻地で開業されている先生は紹介するのに足踏みしてしまうことがあるので、そういう方の後押しをしたいですね。

五條:口腔がんについて、患者さんが自己診断する基準はありますか?

別所:お口の中に今まで見たことがなく、二週間以上治らない口内炎ができたら歯科医院に行った方が良いと思います。

五條:特に喫煙している方には注意していただきたいですね。

別所:そうですね。ただ、最近は喫煙や飲酒をしていない方が口腔がんを発症するケースが多いです。ピークは50~60代ですが、若い方と女性が増えてきています。

五條:そうなんですか…違和感があれば早めに受診することが大切ですね。別所先生のような専門医に診てもらうのが一番ですが、それが難しければこのシステムを導入している医院に通えば良いということですね。

別所:そうですね。

五條:別所先生は口腔外科の認定医や専門医だけでなく、指導医に認定されていますが、日本に指導医の先生はどのくらいいるのでしょうか?

別所:1000人ちょっとですね。

五條:難易度はかなり高いですよね?

別所:東京歯科大学では客員教授の方を入れて6人ですね。

五條:大学で6人しかいないのは凄いですね!指導医になるとどういうことができるのでしょうか?

別所:専門医を指導でき、施設長になれますね。口腔外科の基幹病院を立ち上げる際、そこを口腔外科の認定施設にするためには常勤の指導医が1人いなければなりません。

五條:一般的な病院の口腔外科の先生が認定医の資格は持っていても、指導医の資格は持っていない可能性があるんですね。

五條:口腔外科指導医がいる医院の存在は、患者さんにとっても大きなメリットになりますよね。

別所:そう思います。

五條:当院の印象について教えてください。

別所:口腔外科医としては、五條先生をはじめとしたスタッフの皆さんが外科処置の重要性を理解していること、完全個室診療室が二部屋あることは非常に助かっていますね。

五條:大学病院では一日に親知らずを何本ぐらい抜いていますか?

別所:日によっては一日10本以上抜くこともありますね。

五條:それは多いですね。別所先生は第一執刀医としてどのような手術を行っていますか?

別所:主に口腔がんや顎変形症の手術を行っていますね。特に、顎変形症の手術は一週間に一回のペースで行っています。

五條:それはかなり多いですね。

別所:年間で10回程しか行わない病院もあるんですが、東京歯科大学では、年間で約220回行っています。恐らく、全国一位の症例数だと思います。

五條:その一翼を先生が担っているということですね。

別所:口腔外科の指導医になる前に専門医の資格を取ったのですが、専門医になるとがん治療認定医の試験を受けることができます。これを取得するには医者と同じ試験を受けなければなりません。

五條:先生はそちらも取得されたのでしょうか?

別所:はい。全てのがんについて勉強しなければいけなかったので、大変だったのを覚えています。

五條:凄いですね。では、例えば化学療法や放射線療法でお困りの患者さんの相談にも乗れるということですね。

別所:そうですね。

五條:研修医に親知らずの抜歯について指導する際は、どのようなことに気をつけていますか?

別所:患者さんの全身状態を把握することの重要性を伝えています。どちらかというと男性の方が多いのですが、怖がっている患者さんの治療はこちらとしてもやりづらいので、一人ひとりのキャラクターも見るようにしています。

五條:怖がっている患者さんにはどのような対応を心がけていますか?

別所:治療に関する説明を丁寧に行い、理解していただいた上で、患者さんの緊張を解きほぐすようにしています。寝不足や風邪などの状態で抜歯すると、感染リスクが高まるので、健康管理にも注意していただいています。

五條:親知らずを残すリスクについてはどうお考えですか?

別所:何度も繰り返し痛みが出ている歯は抜くべきですが、骨に完全に埋まっている親知らずを無理に抜いて神経麻痺のリスクを抱える必要はない、というのが私の考えです。

五條:なるほど。以前矯正歯科の勉強会で、可能であれば親知らずは18歳までに抜いた方が良いと聞いたことがありますが、別所先生はそうお考えですか?

別所:年齢に関係なく、今後間違いなく痛みが出ると考えられる生え方をした歯は抜いた方が良いと思います。そういう歯に対して、「抜かないで様子を見ましょう」と言う先生は正しい形で歯を抜く技術がない可能性があります。

五條:そうですよね。当院が別所先生のような専門医の方に来ていただいているのも、あらゆる症状でお困りの患者さんに対応するためです。これからもよろしくお願いします。

別所:こちらこそ、よろしくお願いします。