周術期の口腔ケア「病気がなおったが健康とは呼べない体」にならないために

長期入院の時にこそ必要になる口腔ケア

※現在、当院と連携して周術期口腔管理を行っていただける医院様へ、当院の考え方や実施内容などをご説明しております。 当院との連携をご検討いただける医院様は、こちらよりお問い合わせ下さい。

周術期とは

周術期とは、がん治療や消化器・循環器などの手術、骨折後の機能回復のための手術など、あらゆる手術に関わる入院、麻酔、手術、回復という手術前後を含めた治療期間のことです。すなわち、手術に伴い、長期にわたる入院が必要となるような期間を示します。

この周術期には、がん治療の際に行われる抗がん剤などによる化学療法や放射線治療の期間も含まれます。しかしながらこの時期は、歯ブラシによる通常のブラッシングだけでは除去できない汚れを除去するいわゆる”口腔ケア”は後回しにされることが多く、“歯科”を標榜している総合病院でないと口腔ケアはほとんど行われていないのが現状です。その結果、元気に仕事をしていた人が、初回の入院で体調を崩し、食事がうまくできなくなったり、肺炎による入院を繰り返すようになったりすることがあります。

そこで当院では、周術期における様々なリスクに対し、医科と連携してこれらを回避しサポートするために、周術期口腔機能管理、口腔ケアに力をいれております。これにより、入院中や手術前後の合併症、誤嚥性肺炎、口内炎などの予防し、お口から通常通りの食事をすることの維持が可能となります。

周術期の患者さんへなぜ口腔ケアが必要なのか

患者さんのお口の中は、周術期である入院中や、化学療法・放射線治療を行っている期間、以下のようなリスクにさらされているといえます。

周術期の状態

  • 飲食を禁止されていることがある。
  • 気管や肺の中にチューブなどが入っている。
  • お口を開けたままの状態で固定されている。
  • 無意識状態で食べ物を飲み込むことができない。

主なリスク

  • 手術による傷口からの感染。
  • 誤嚥性肺炎の発症。
  • 抗がん剤治療や放射線治療の際に惹起される、お口の中や顎のトラブル。
  • 人工呼吸器がお口を通る際に起こる歯の脱落や破折。

以上のような周術期のリスクにより発生するトラブルは、日々の歯ブラシだけでは効果的に防止できるわけではありません。さらに、看護師などによる口腔ケアだけでは不充分なことがあり、歯科衛生士による専門性の高い介入が積極的に必要な場合が多いといえます。

もともとお口の中には多くの細菌が存在していますが、手術を受ける前から適切な口腔ケアを受け、あらかじめお口の中の細菌の数を減らしておくことが重要です。このように、リスクを軽減した状態で手術を受けていただくことで入院日数が短くなることも、様々なデータから明らかになっています。

周術期等の口腔機能管理は誰が担うのか

厚生労働省は、周術期における口腔機能管理の強化を推進しており、近年、医科と歯科の連携が強く推奨されています

しかし今現在は、医科、歯科の双方とも手さぐりで患者さんにとって最良の方法を摸索している状況です。総合病院内にある歯科や、その歯科に勤務する歯科医師の数は限られていますので、我々の周術期の患者さんへの訪問診療や口腔ケアの技術提供、また情報の蓄積や(患者さんや医科の先生との)共有が必要不可欠といえます。

さらに周術期を控えた方には、治療後の職場復帰や在宅療養への以降を含めた、シームレスな中断することのない対応が必要とされています。

そしてそのような、医科・歯科連携、技術提供や情報の蓄積・共有、シームレスな対応ができるのが、全国の歯科診療所のうち7%が厚生労働省から指定を受けている「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」です。

かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所〔か強診〕の新しい役割

当院には、

  • 日本の平均的な歯科医院を大きく上回る人数の歯科衛生士が在籍。
  • 地域でも早期から訪問歯科に取り組み、実績やノウハウを蓄積。
  • スマートフォンなどから患者さまの口腔内の状況を時系列で確認できる「歯科クラウド」を使用した口腔ケア情報の提供。

など、周術期の口腔ケアを効果的に行うための基盤を、地域の総合病院、クリニック、介護施設、学校などの教育機関と連携することにより、長年にわたり築いてきました。

その結果当院は、口腔機能の維持と改善により患者さんの健康寿命を伸ばし、QOL( quality of life゠生活の質)の向上を図るという目標の実現に向けた機関として、厚生労働省から「高度な定期管理(メインテナンス)を行う、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」の認定を受けています。

当院では、周術期の方にリスクの軽減だけでなく快適で健やかな時間を過ごしていただくために、周術期口腔機能管理をかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所〔か強診〕の新しい役割として横浜市の皆様へ積極的に推進してまいります。

現在、医科に通院中の方、これから周術期を迎える予定の方、ご家族が周術期を迎える方は当院と現在提携を結んでいない病院へ通院していたとしても、お気軽にご相談ください。

周術期の口腔機能管理で実際に行うこと

実際に行う口腔ケア

  • 口腔内の診査(歯周組織検査含む)
  • 歯石の除去
  • むし歯の治療
  • 入れ歯の調整
  • 動揺歯(揺れている歯)の固定や抜歯
  • セルフケアの指導

実際に行う医科との連携や患者さんとの情報共有

  • 周術期口腔機能管理計画書の作成
  • 周術期口腔機能管理報告書の作成
  • 診療情報提供書(口腔処置報告書)の作成

上記に加え、

  • 口腔内写真など、お口の中の情報を病院(医科)と共有
  • 患者さんやご家族の方へ必要に応じて情報のご提供やご説明
  • ご希望があった際の、唾液検査、歯周病リスクの検査
  • なども行っております。

      当院では専任のスタッフが訪問診療を行っておりますので、周術期が終わった後にご自宅で継続した口腔ケアが必要になった場合も、充分に対応できますのでご安心ください。

      周術期の口腔機能管理(口腔ケア)から得られるもの

      周術期のリスクを口腔ケアにより軽減することで、患者さんは以下のような大きな利益を得ることができます。

    • 肺炎などの感染症の予防
    • 抗がん剤の副作用による口内炎の予防や対応
    • 「食べる」という機能の保護(早期の回復)
    • 周術期は免疫力が低下することで、様々なバイ菌によるリスクが上昇します。お口からいろいろな細菌が体内に侵入し「感染源」にならないためにも、口腔ケアを行うことは非常に重要となります。

      術後の死亡要因の多くに誤嚥性肺炎があげられますが、これは周術期の口腔ケアが充分でない可能性が示唆されています。誤嚥性肺炎のリスクを軽減する意味においても、口腔ケアが大きな役割を果たしているといえます。

      「食べる」という機能の維持回復から感染症予防まで、口腔ケアがもたらす利益を周術期の周術期口腔機能管理から得ることができます。
      その結果、「病気は治ったが健康とは呼べない体」となってしまうことを、未然に防止することができるのです。