
こんにちは。金沢文庫の五條歯科医院です。
歯磨きの後、「口の中がすっきりした」「爽快感があって気持ちいい」と感じる方は多いのではないでしょうか。
私たちが毎日何気なく感じているこの“すーっ”とした感覚。その正体は、多くの歯磨き剤に配合されているメントールという成分です。
今回は、歯磨き剤に含まれるミントとメントールのお話をご紹介します。
ミントの「すーっ」はなぜ起こるの?
メントールは、ハッカやペパーミントなどのミント類に含まれる天然成分です。
実は、メントールには口の中を本当に冷たくする働きはありません。
私たちの口の中や鼻には、「冷たい」と感じるセンサーがあります。メントールはそのセンサーを刺激するため、実際には温度が変わっていなくても脳が「冷たくなった」と認識します。
その結果、歯磨きの後に爽快感や清涼感を感じるのです。
暑い日にミント入りのガムを噛むと涼しく感じたり、のど飴をなめるとスッとするのも同じ仕組みです。
ミントは気分だけの問題ではありません
「すーっとするだけなら、入っていても入っていなくても同じでは?」
そう思われるかもしれません。
しかし、メントールには口腔内でいくつかの良い働きがあることが知られています。
例えば、
- 唾液の分泌を促す
- 口の中の不快感を和らげる
- 口臭を一時的に感じにくくする
- 軽い抗菌作用を持つ
- ブラッシング後の爽快感を高める
といった作用があります。
もちろん、メントールそのものがむし歯や歯周病を予防するわけではありません。
むし歯予防にはフッ化物、歯周病予防にはプラークコントロールが重要です。
しかし、「磨いた後に気持ちがいい」「すっきりする」という感覚は、毎日のセルフケアを続けるうえで意外と大切な要素なのです。
実は作るのが難しかったメントール
現在では歯磨き剤、洗口液、ガム、のど飴など数多くの製品にメントールが使われています。
ところが昔は、メントールを大量に作ることが大変難しいという問題がありました。
天然のミントから採取する方法では、
- 天候に左右される
- 収穫量に限界がある
- 価格が安定しない
という課題がありました。
日本だけでも年間数億本の歯磨き剤が生産されていることを考えると、天然ミントだけで需要を満たすことは簡単ではありません。
そこで世界中の研究者たちが人工的な製造方法の研究を進めてきました。
ノーベル賞につながった日本人研究者
この難題の解決に大きく貢献したのが、ノーベル化学賞を受賞した日本人化学者の野依良治先生です。
メントールには右手と左手のような「鏡写し」の分子が存在します。
私たちが爽快感として感じるのは、そのうちの一方だけです。
野依先生は「不斉触媒」という技術を発展させ、目的とする分子を効率よく作り出す方法を確立しました。
この技術はメントールだけではなく、多くの医薬品や化粧品の製造にも応用され、2001年のノーベル化学賞受賞につながりました。
毎日の歯磨きで感じる爽快感の背景には、日本が誇る世界的な研究成果も隠れているのです。
歯磨き剤選びで大切なこと
歯磨き剤を選ぶ際、「すっきりするから」という理由で選ぶ方も多いと思います。
もちろん爽快感は大切ですが、それ以上に注目していただきたいのがフッ化物(フッ素)の濃度です。
現在、成人のむし歯予防には1,450ppmF程度のフッ化物を含む歯磨き剤が推奨されています。
ミントの爽快感は歯磨きを続けるモチベーションになりますが、本当に歯を守ってくれるのは毎日の適切なブラッシングとフッ化物の働きです。
歯磨き剤選びに迷ったら、お気軽に五條歯科医院までご相談ください。
私たちは患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせて、セルフケア用品のご提案も行っています。
>>五條歯科医院の予防歯科
エビデンスコーナー
・野依良治 「不斉触媒による不斉合成反応の研究」で2001年ノーベル化学賞受賞
・TRPM8:メントールは冷感受容体TRPM8を刺激し、実際の温度低下がなくても清涼感を生じさせることが知られています。
・American Dental Association:フッ化物配合歯磨剤の使用をむし歯予防の基本として推奨。
・日本口腔衛生学会:「フッ化物応用の科学」においてフッ化物配合歯磨剤の有効性を推奨。
・メントールには冷感作用、軽度の抗菌作用、唾液分泌促進作用が報告されており、歯磨き後の爽快感やセルフケア継続への貢献が期待されています。